構造デザイン

内藤廣 著 「構造デザイン講義」読了


建築の構造に関する本です。

ここに書かれている内容は東京大学で建築家・内藤廣が行った講義を文書化したもので

氏が教壇に立って三年間にわたって行ってきた授業をまとめた本。



内藤さんは今年のデザインレビューで審査員として来られていて、

僕の作品にもコメントと票をくれました。

そのときに一瞬で僕が作品を通して伝えたかったことを見抜き、

さらっと「こういうことがやりたいんでしょ?」といわれたことが印象的でした。

巨匠とはこういう人のことを指すのだと感じたのを今でも鮮明に覚えています。



率直に言えば、今まで読んだ構造関係の本で一番面白かった。

面白かったというよりは、共感する箇所が一番多かったといったほうが正しいかもしれません。

できるならもっと早い時期にこの本に出会っておきたかったというのが感想です。


僕は大学時代は構造の授業がつまらなかったので嫌いでした。

授業もいつも一番後ろの席に座って聞いていたので、一回落第もしました。

でも今思えばなんてもったいないことをしていたのだろうと反省するばかりです。



今、設計事務所に勤めはじめて構造がすごく好きになり始めています。

そんなときにこの本が読めて本当によかったと感じています。

建築にとって構造とは歴史であり素材であり、ほとんどの部分を占めています。


自分の大学ではかなり素材別に、そして局所的に教えるようなスタイルだったので

そのときにはわからなかったけど、この本はそういった建築を取り巻く全体像を


包括的に構造とリンクさせて説明しているので


ああ、こういうことだったのね。


というポイントが多いというのが特徴でした。


コンピューターの進化とともに進む構造解析のブラックボックス化や

イメージする力の欠落、建築家の職能が分業化していくことへの問題意識

建築家が書いた未来予想本の中ではかなり実践的な経験から生まれたまっとうな論だと思います。


そしてなりより、この人はどこかの本に書かれていることをそのまま言うのではなく、

本に書かれていることや、身の回りで起こっている現象を丁寧に自分なりに分析して

解釈し直し再定義していることが一番の魅力。


「建築的な価値とはその時代の精神の現れのことです」


過去でもなく未来でもなく、今目の前で求められているもの。

そんな価値観を分析し統合し僕も少し未来を想像してみようと思います。


建築関係者でまだ読んだことがない人は是非読んでいただきたい一冊です。

次は同じシリーズ「環境デザイン講義」を読み始めようと思います。