これから
建築家 坂口恭平 著 「独立国家のつくりかた」
建築家 伊東豊雄 著 「あの日からの建築」
読了。
年明けから仕事はぶっこみ気味。
中国は平日が休みになるとその振替で土日も出社しないといけないという変わった決まりごとがある。
ということで、春節まではたぶんこんな感じ。
ペースを保つという意味では休みは時間の長さじゃなくて、周期の方が大切なんじゃないか説が自分の中で浮上してます。
正月中に普段は読めない日本の本を読もうと思って建築系の本を二冊読みました。
両方とも3.11の震災後に書かれた本で
個人で立ち向かうことの限界を自然によって見せつけられた建築家はこれからどうしたらいいのか?について書かれた本だと思います。
まずは、坂口恭平 「独立国家のつくりかた」から
タイトルだけを見るとなんだか怪しげな新興宗教のように見えるけど、
今の日本が直面している問題を冷静に考えると結構真っ当な事を言っている。
普通に生活していたら「お金」の価値なんて考えなくても、たぶん今の日本だったら生活できてしまう。
でも冷静に考えると、ただの紙切れがなんでみんなが絶対に信じる価値を持っていて、
みんなはそれを何の疑いもなく欲しいものを手に入れるために使い、
それをもらうために必死に働くのか?という疑問につきあたる。
もし、明日から「お金という概念はなしにします」って言われたら、あなたはどうやって生活しますか?
ってことに対して著者なりの答えと、その行動をまとめた本です。
お金がある事前提で物事が進んでいる現在の国家。
それとは別のレイヤーで生き方を考えて行くのがそこから独立した「独立国家」
資産と呼ばれるものが預けてある銀行、車、家がすべて無くなった状況は震災直後に実際に起こったことで、
他人事とはとても思えません。
変わりつつある日本の価値観やくらしの行方は現在の国家のままいくのでしょうか?
それとも独立国家へシフトしていくのでしょうか?
憧れの「マイホーム」のローンを返すために必死で定年まで働く日本人のくらしに一石を投じた本です。
ローンで新築の家を買おうと思ってる人は読んだ方がいいかもしれません。
とりあえず、今、確実に言える事は、日本は家をつくりすぎて、余ってます。
人口が減っていくことも確実なので、これからも余った家は圧倒的に増えていきます。
リノベーションも単体で見ると画期的な手法に見えるけど
全体でみると延命処置的にも見える。
「縮小」を各自がどうとらえるかです。
二冊目、伊東豊雄 「あの日からの建築」
こっちは前者とは同じように見えて超対照的。
伊東豊雄はこれまで日本の建築のトレンドをずっとリードしてきた存在の一人。
最近はセシルバルモンドなどの構造家と一緒にアルゴリズムやコンピューター技術を多用した作品を国内外で多く生み出してきた。
そんな伊東が震災後につくった「みんなの家」はこれまでの作風をまったく感じさせない一見「ふつうの家」だった。
僕はそれを見たときに、驚きと共に日本の次の時代の始まりを目の当たりした気がしました。
「あの伊東豊雄がつくった家がこれか」と
だから、この人は震災後に何を考えているのかがとても興味深かった。
巨匠と言われているこの人でさえ、これまでの建築、建築家のあり方を疑わなくてはいけないという状況。
最近の活動を見ると結局また同じ事を繰り返そうとしているのではないかと思ってしまうことが多々ありますが、
日本全体が本当に今まさに転換期なんだと思わせられます。
約30年前の日本が置かれていたバブル期のような現在の中国で設計に携わる身として
このまま行くと中国も日本と同じ道を辿ってしまうのではないのかという危惧はここにいる限り消えそうにありません。
これは一個人でどうこうという話ではないし、
豊かになりたいと思うのはきっと世界中が思っていると思うし、
それを否定するわけにもいかないし。
他人事といってしまえばそれまでなんですけど、なんかね。
なんか、アプローチできることはないものか
そんな日本と中国の反する状況を体験している中、建築家やデザイナーの役割って何?
って最近よく考えてしまいます。
経済とか建築とかが何が善なのかがますますわからなくなってきているそんな2013年の1月。
おやすみなさい。