福建土楼 南靖


「裕昌楼」1308年元代に建てられ、中国で最も古い土楼の一つだと言われている。


「裕昌楼」の柱。
建材測量ミスによって最大で15度傾いていると言われている。
それでも700年建ち続けている。


「裕昌楼」内部


土楼に使われている土は石灰、粘土、砂を押し固めたもので、横補強材は割竹。


田螺坑土楼群


基本構造は木造瓦屋根で、内壁も土を押し固めたレンガでできている。


入り口の門は花崗岩の角材、扉は13センチほどの厚みの木材を鉄製装甲板によって補強されている。




先週は連休を利用して、福建省の土楼を見学に上海から国内線の飛行機に乗って約3時間。
厦門(アモイ)の空港に降り立ち、そこからローカルバスに乗り換え約3時間かけて南靖という駅まで。
そしてまたそこからバスで2時間くらいかけて、土楼のある山奥の村へ。
途中から村人の小さなワゴン車に乗り換え、蛇行しまくっている山道を激しく揺られながら土楼へと向かう。



2008年に世界遺産に登録されたこともあり、かなり内部は観光地化されていた。
ただ、普通にそこで生活をしているので、上海から急にここに来るととても同じ中国とは思えず、
言葉も北京語ではなく福建語でほぼ聞き取れなかった。


基本的に土楼で入れるのは中心部の中庭部分のみ。
土楼の土壁の厚みは約180センチと言われている。
そもそもの成り立ちが外敵からの攻撃に耐えうる形態であるため、城壁と住居を足したような造形になっている。


ここに住む人々は「客家」と呼ばれる漢民族
客家に関する言説はたくさんあるが、ここでの風習に興味深いものがある。

「隣の人に親切にしてもらっても、  その人にお返しをしてはならない」

という教え。

円形の土楼に住む客家の人々は

「右隣の家に人に親切にされたら、反対の左隣の家に人に親切をしなければならない」

というルールがあると言う。



隣の人に親切にされて、その人に親切にしてあげると、その二人だけで物事が完結しまうが、
反対側の人に親切にしてあげると、それが連鎖していき、円形の土楼を一周して、
そこに住む人みんなが幸せになって、それが自分の元に返ってくるというものらしい。
土楼といえば、外敵から身を守るために出来た円形の造形が注目されているが、
慣習もこの円形によってつくられていることが興味深かった。
「コミュニティ」を考える上でも土楼は様々な事を私たちに教えてくれる。



古いものは約700年もの間ここに建ちつづけているという。
それは単に強固なコンクリートで固めているわけではなく、

「そこで入手できる材料」によって

「そこにいる人によって手入れできる」ものであり

「時代に合わせて変化させることができる」ものであるから

何世紀もここに建ち続けることができるのだと思う。



現代建築で、これほど永く人に使われ続けている建築はこの世界で一体いくつ存在するだろうか。


建築を保存し続けるということは、建築を使い続けることではないだろうか。


建築の価値について考えさせられる。